健康ジャーナル

 
  
    

2016年7月19日(火)

届出SRの質向上などを目的に検証、報告書を公表

「機能性表示食品」制度における機能性関する科学的根拠の検証−届け出られた研究レビューの検証事業報告書
機能性表示食品制度の今年度以降の適正運用のための課題抽出図る

7月7日、消費者庁は機能性表示食品研究レビュー検証事業についての報告書を公表した。報告書では、システマティック・レビュー(SR)を適正に行うための注意事項などが取りまとめれられた。検証事業を通じて、これまでに受理された届出のSRには、問題を抱えるものが多数含まれること明らかになった。また今回取りまとめられた報告書は、制度の見直しに向けた検討や監視業務に、大きな影響を与えると予想されるところだ。

消費者庁がこのほど、公表した「『機能性表示食品』制度における機能性に関する科学的根拠の検証−届け出られた研究レビューの質に関する検証事業報告書」では、事業者が機能性表示食品を届け出る際に必要なシステマティック・レビュー(SR)について、適正に行うための注意事項などが盛り込まれた。

昨年10月30日に消費者庁が外部委託による研究レビューの検証に着手し、来年3月末までに結論を出す方針を明らかにしており、今回の報告書はこれを受け、取りまとめたものになる。

機能性表示制度について、本来の設立された概要を追っていくと、2014年7月30日に消費者庁が「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書」を公表し、2015年4月から「機能性表示食品」制度がスタートした。

同制度は食品表示法に基づく食品表示基準に規定されており、消費者庁長官に届出を行うことで、安全性および機能性に関する一定の科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任において、健康の維持および増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く)が期待できる旨の表示を行うことが可能となる制度だ。

もともと食品の機能性表示は特定保健用食品と栄養機能食品においてのみ可能だったが、同制度の施行により、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢が増え、消費者がそうした商品の情報を得て選択できることが期待されている。

機能性に関する科学的根拠は、2015年3月30日公表された「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」にのっとって「最終製品を用いた臨床試験」、「最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー」のいずれかで示すこととされている。

機能性表示食品の現状を見ると、2015年10月31日時点では313件の届出が、消費者庁ウェブサイトに公表(うち4件は撤回)されている。研究レビューは、研究論文等の文献から得られる知見を体系的に整理したもので、一般的にシステマティック・レビュー(SR)と呼ばれている。

同制度における機能性に関する研究レビューの方法については、ガイドラインに「最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビューの実施に当たっての留意事項」が明記されている。

食品関連事業者は定性的研究レビュー又は定量的研究レビュー(メタアナリシス)を実施し、「totality of evidence」(関連研究について、肯定的・否定的内容および研究デザインを問わず検討し、総合的観点から肯定的といえるかを判断)の観点から、表示しようとする機能性について肯定的と判断できるものに限り、科学的根拠として成立するとしている。

同制度が消費者からの理解を得て、更に普及・発展するためには、機能性の科学的根拠として提出された研究レビューの質評価を行うことが必要である。

今回の検証事業では、同制度において届出された食品について、その機能性の根拠となる届出SRについて科学的な評価を行い、平成28年度以降の同制度の適正な運用に向けた課題の抽出、届出SRの質を高める方策等の検討を行うことを目的としている。報告書では、以下の内容が盛り込まれている。

①PRISMA声明チェックリストに基づく検証

②制度における届出SRに特有の報告方法の質の検証

③機能性表示食品の届出SRの改善のポイントの提示

ワーキンググループ設置しSRを検証

今回の検証事業を行ったワーキンググループの委員一覧は、大室 弘美氏(武蔵野大学薬学部 教授)、折笠 秀樹氏(副委員長・富山大学バイオ統計学・臨床疫学講座 教授)、上岡 洋晴氏(委員長・東京農業大学地域環境科学部 教授)、北湯口 純氏(雲南市立身体教育医学研究所うんなん 主任研究員)、佐山 暁子氏(聖路加国際大学学術情報センター図書館 司書)、島田 美樹子氏(日高リハビリテーション病院栄養課 管理栄養士)、唐 文涛氏(東京大学大学院薬学系研究科博士課程)、眞喜志 まり氏(東邦大学習志野メディアセンター 司書)、吉﨑 貴大氏(東洋大学食環境科学部 助教)。

検証事業では、PRISMA声明チェックリスト(2009年)に基づく評価のほか、多くの評価方法を検討し、届出SRの評価を行われている。

検証事業の目的としてあるのは、届出SRが正しい方法論に基づいて実施されたかを明らかにし、届出SRの質を高めるための提案を行うことにある。具体的には、記述すべき事項などに関して、不履行や記入漏れ、不確かな点がないかを検証し、どのように記述すべきかを提案することだ。そのため、届出SRで記述された本文と図表が検証の対象となっている。

食品の機能性表示における主な関心事は、機能性関与成分や最終製品は、「本当に安全なのか」、「作用機序は本当に明確なのか」、「本当に機能があるのか」の3点であると考えられるなかで、これらを明らかにするには、届出SRや別の資料で提出された「引用・参考にした一次研究」に遡り、個々の研究報告の質を評価しなければ結論を見出すことはできない。

それはまた別の次元の検証研究であることから、今回は機能性関与成分や最終製品における安全性、作用機序、機能性の有無をカバーするものではなく、前述のとおり報告方法の質の評価に限定している。

【本紙につづく】

 
 
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