健康ジャーナル

【2014年04月01日より】
 
  
  
 
  
   
  
 
  
   
  
 
  
  
 
  
   
  
 
  
  
 
  
  
 
  
 

連載:ふかせひろしのキトサン徒然草 その1

1996年、北海道大学でのシンポジウム
キチン・キトサン研究会として最後の学術会議

キチン・キトサンへの思い

 ふた昔以上前のこと、ある月刊誌で健康食品を取り上げることになった。その取材をするなかでキチン・キトサンという素材に出くわして好奇心を刺激された。
 キチン・キトサンとはどのような物質なのか? 取材を進め、いろいろ調べると日本では1981年に第1回キチン・キトサンシンポジウムが開催され、 その翌年に農林省(当時)の主導でキチン・キトサンの本格研究がスタート。さらに1985年には文部省(当時)がキチン・キトサンの基礎・応用研究を奨め、 全国の大学で研究が深められた。

 その結果、カニ、エビなどの殻の成分であるキチンや、キチンからアセチル基を外したキトサンにさまざまな働きがあることが 明らかになりつつあり、健康食品の素材としても有用であることなどが浮かび上がってきた。血中コレステロール低下作用、中性脂肪低下作用、血圧上昇抑制などの 機能性が明らかにされたころであり、キチン・キトサンのことをさらに知りたくなり、記者はキチン・キトサン研究会に入会した。

 1996年は、日本のキチン・キトサン研究の総本山である日本キチン・キトサン学会にとって重要な年であった。それは日本学術会議に学術研究団体として登録し、 「キチン・キトサン研究」(機関誌)が学術刊行物として認可されたことだ。これを受けて「キチン・キトサン研究会」は翌年、『日本キチン・キトサン学会』と 名称を改めることになった。

 初めて参加したシンポジウムは、1996年の6月8日・9日、北海道大学で開催された第10回。主催はまだキチン・キトサン研究会であった。 記者は、それまで各大学や研究機関の研究者が一堂に集い、研究成果を報告する場に同席しことはなく、後ろの席で研究者の発表に耳を傾けたが、 生化学の素養のない文系の身にとっては、せいぜい30%ほどしか理解できなかった。それでも発表する演者の研究成果を語る言葉と研究者たちの討論は、 キチン・キトサンのもつ大きな可能性を感じさせられた。幸いにも自分は記者という立場にあり、これから多くの研究者に取材したいとの気持ちが高まった シンポジウムであった。同シンポジウムで注目した演題は東北薬科大学、焼津水産化学工業の研究グループによる①『キチンおよびキトオリゴ糖長期経口投与の マウスに及ぼす影響について』、鳥取大学の研究グループによる②『キチン及びキトサンの補体活性効果』など。

 ①の研究報告は、先に同研究グループがキチン(腹腔内投与)とN―アセチルキトヘキサオース (静脈内投与)で免疫賦活作用によるマウスに移植した 腫瘍細胞への抗腫瘍活性を報告したのに続いて、長期経口摂取によるマウス生体に及ぼす影響を調べたものだ。この研究ではマウスの脾臓と骨髄を調べ、 免疫担当細胞の増加などの免疫機能亢進作用や血液中の酵素活性の正常化が認められたことが明らかになった。

 また②の研究報告は、生体活性因子の補体に着目し、イヌとマウスにキトサン懸濁液を皮下に投与。 イヌでは3日目に約1・6倍の補体活性を示した。マウスは5倍量のキトサンを投与することでイヌと同じ程度の補体活性を示した。
 現代ではキチン・キトサンやそれらのオリゴ糖と免疫との関係の研究はずいぶんと進展しているが、これらの研究報告でも見て取れるように、 1990年代前半にその基礎となる研究が始まっていたのである。

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